河村惇平 公式サイト

被疑者物語 The Suspect Redemption

逮捕前から留置施設までのノンフィクションレコード。

0. 前書き

この文書は、筆者の体験を基に構成される実録レポートです。2009年8月に筆者はインターネット上の掲示板「2ちゃんねる」に、当時衆議院選挙出馬中だった前原誠司さんを対象とした犯行予告ととれる書き込みをしました。それが発端となり警察は捜査を開始、同年10月に家宅捜索及び逮捕され留置施設へ。それから留置生活を経て自由の身になるまでの、僕の身に起こったことをまとめた、僕を主軸とした物語です。なお劇中に登場する人物名・地名・組織名などは当事者である「河村惇平」「前原誠司」2名を除いて全て仮名としています。とはいっても、能う限り名前付きの登場人物を出さないよう心掛けてはいます。

主に一人称視点で物語は進行し、地の文の一人称も「僕」で統一します。「私」や「俺」でも良かったのですが、期間中は実際に「僕」と称することが多かったため都合を図りました。わかりやすいよう対話文などは『二重かぎ括弧』が僕のセリフ、「かぎ括弧」が僕以外の人間のセリフとします。中立的な立場の文章になるよう努めますが、僕の思ったことや感想はそのままに載せます。少ないとは思いますが、僕と関わった人が見るのであれば「あの時こんなことを思われていたのか」と相互の視点で進行し面白いのではないでしょうか。中には僕から良く思われていない人もいますがそれは僕の立場や色眼鏡のせいでもあって、実際は善い人が多いです。

警察署内や留置施設内、検察庁などの設備は関係者以外が見るには新鮮だと思います。僕自身、そう思いました。その辺りにもスポットを当てて書くつもりですので今生これらの施設に関わることの無い人であれば、まあ、それなりの知識にはなるでしょう。要らないとは思いますが。

前書きの最後になりますが、僕はこの文書で嘘は一切書きません。思ったことは全て正直に告白します。

目録

1. 09年10月6日(火)

2. 09年10月6日(火) 其の二

3. 09年10月11日(日)

逮捕の日である。前回の警察署での取調べから5日経った休日の朝、僕は自室でTVゲームをしていた。前日の土曜日は地域の祭りだったため御輿(みこし)を担いで町内を歩き回った。祭りは一晩明けた日曜日の今日もやるため、疲れてはいても落ち落ち寝てはいられないのだ。朝の5時ごろ目が覚めた僕は二度寝を諦め、祭りが始まるまで独りで暇を潰すことにした。

午前7時だったか9時だったか、正確に憶えていないが玄関先に黒光りするワゴンが止まった。警察署から来た車だ。中には数人の刑事が乗っており、車から出ると玄関から家に入って僕を呼ぶ。それに応じた母さんが僕に連絡する。それを聞いて僕は初めて刑事の来訪を知る。なんでも、エイ警察署に来て欲しいとのことだ。窓から外を見ると先日の捜査班に混じっていた例の美人な刑事が見えた。証拠品の押収はもう済んでいるのでもう強引に2階の部屋まで入ってくることはない。

ゲームを止め準備をし、外に出ることにする。なにを着て行こうか悩んだが、前回と同じスーツにすることにした。写真を撮られることがあるのなら私服よりは良い、という判断だ。

話は前回の取調べで粗方話し終えたが、5日経った今日、再度来るとはどういうことだろう。まあ、行ってみればわかることだ。――このときの僕は、まさか彼らが逮捕令状を持って来ているとは考えなかった。

取調室の詰まった空気を思い出しマスクを持って行くことにした。1階で待つ数人の刑事と共に外に出て、ワゴンに乗り込む。刑事の顔をそれぞれ見るが、今日は鈴木刑事とスポーツマンの刑事はいない。きっと警察署で待っているのだろう。代わりに初めてみる顔が2人いた。高嶋政伸を極めて田舎っぽくしたような顔の20〜30代の刑事と、皆スーツなのにひとりアロハシャツを着た50代のおっちゃんだ。――前者の田舎顔という表現は失礼かとは思ったが、それ以外に適切な形容ができないほど個性的な顔だったため敢えてそう表現させてもらった。僕としては田舎顔を貶める意図はない。

この朝は日曜日ということもあり両親共に家に居たので、二三の言葉を交わしてから外に出る。10月の半ばの午前らしい良い気候だった。空も澄んでいる。僕の記憶が正しければ、夜を除いてこの晴れた天気は土曜日まで続くはずだ。

ワゴン車に乗り込みアロハのおっちゃんの隣に座る。向かう先はエイ警察署。前回と違うのは、コンビニに昼食を買いに行ったりはしなかったことだ。つまり今日は午前のうちになんらかの形でけりが付く可能性が高い。僕は暢気に『早く帰れれば良いなあ』などと考えていた。地域の祭りがあるためだ。僕は、祭りが好きなのだ。

警察署までの道中、御輿を担いだ集団が見えたのでアロハのおっちゃんが「なんだ、今日は祭りか」とつぶやく。隣町ではすでに祭りが始まっているらしい。しかし、同じ祭りが隣町でもやっているとは知らなかったな。てっきりうちの地域だけかとずっと思っていた。僕のところの祭りは太鼓を乗せた御輿を担ぎ食べ物を用意している色んな家を回っていくというものなので、隣町でやっているこの祭りもきっとそうなのだろう。ところでアロハのおっちゃんは、僕に声を頻繁にかけたりするなど緊張をほぐすよう努めていた。前回の車移動とは違った点だ。僕としてはこれから敵地とも言うべき場所に向かうのだからあまり馴れ合いたくはないのが本音だが、これは純粋に嬉しかった。なかなか気さくな50代だ。

警察署に到着し、鈴木刑事が待っていたとばかりに出迎える。どうにも見たくない顔だ。前回の取調べで会って以来、どうにも嫌悪傾向の感情が芽生えてしまった。取調べという場が手伝ったのもあるだろうが、そもそもの問題として僕は人の好き嫌いが激しい。過激な表現をすれば、暗殺する予告文章を書いたこの僕が強いて誰かを殺害するというのであれば、名前と顔しか知らず話したこともない国会議員などよりこの目の前の憎らしい刑事の頭をライフルで撃ち抜いてやりたい。

ここまで

特記

日本国憲法第21条
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
※参照 日本国憲法(法 庫)

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